スターサファイヤのきらめき
「いやだ、ま、だ。」
苦しげに吐きだした言葉にあいつは、吐息でごめんねと答えて。
あっけなく、当然に。
終わりを迎えた。
カーテンをすり抜けてたどたどしく差し込んでくる月明かりと、ベッドサイドの仄暗いランプだけが部屋を照らしている。その部屋の中央にある、キングサイズのベッドにぐったりと沈み込んでいるのは、残念なことに俺とフランスだった。暗闇一歩手前の静かで暗い部屋にふたりきり。体と体を重ねて。煽って煽られて、欲を引っ張り出して熱を高めて、意識を研ぎ澄ましてお互いにこれ以上となく真剣になって。まるで、隔離されたかのような二人きりの世界にどっぷりと浸かって、そして世界は闇に溶け込んだ。
はあはあと互いの呼吸と、体の熱さと、世界の残骸だけが今を占めている。好き勝手に動いて(でも、気持ちいいものだからずるい)、俺に愛してるなんて何度も繰り返した野郎は、俺の上にぐったりと覆いかぶさっている。
「のけよ、重い。」
「……ひどい!この重みが愛なんだって。」
「意味わかんねー。」
いつも通りのやり取りをかわして、はあとため息をつく。フランスは幸せそうに瞳を閉じて俺の手を握りしめている。
幸せだ、でも残念だ。サファイヤの瞳、フランスの青。キラキラ輝くその瞳はずっと閉じられたままだ。絶対に言わないけれど、俺は最中のフランスの瞳が好きだ。ゆらゆらと消えてしまいそうな青が深く深く沈み込んで、透き通るようなブレのない青に変わる。色鮮やかな情動があふれ出てくるような青、青、光がきらめく。それを見つめるのが、俺の楽しみの一つだ。だから、今この時間はあまりうれしいものじゃない。だって、あいつはいつも瞳を閉じて、開けた時にはいつもの青に戻っている。
「イギリス、何不機嫌そうな顔してるのー?」
良くなかった?と横に移動してくるフランスはすっかりいつもの調子だ。
「まだ、っていってたのに終わっちゃったのに、怒ってるの?
もっかいする?」
「この変態が。」
「今の別に変態発言してないよね!?」
ばーか、と瞳を覗き込む。あーあ。終わってる。
がっくりと頭を下げた俺を抱きよせて、何を思ったのかフランスは囁いた。
「ねえ、かわいくない俺のイギリス、もう一回お付き合いいただけますか?」
しっとりと声が濡れているフランスは、またあの青で。
俺はニヤリと挑戦的に微笑んだ。